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カレーパングランプリ「金賞」受賞!
別子飴本舗の激うまカレーパン誕生秘話

2022.02.25

オブラートに包まれた個包装、かむほどに広がる甘み。

新居浜のお土産「別子飴」でおなじみ、明治元年創業の株式会社別子飴本舗さんですが、今回取り上げるのは別子飴のことではありません。

同店が開発した話題のカレーパンが昨年、日本カレーパン協会主催の「カレーパングランプリ2021」の2部門でなんと金賞を受賞。そもそも、なぜ老舗あめ屋さんがカレーパンを?

コロナ禍を切り抜く商品開発ストーリーを、7代目越智秀司社長に伺いました。

▲新居浜のお土産といえばコレ!「別子飴」

逆境から生まれた本気のカレーパン

Q まずは「カレーパングランプリ」金賞受賞、おめでとうございます!先日いただきましたが、うわさどおりのおいしさでした。

ありがとうございます。生地には愛媛県産の里芋「やまじ丸」を練り込んでいて、もちっとした食感が特徴です。揚げるのにこめ油を使っているので、カラッとあがって口当たりもいい。中の具材にも、四国中央市の卵、宇和島市のじゃこ天、西予市城川のウィンナーなどを使っています。

▲四国中央市の卵を使用した「半熟たまご」。断面からおいしそうです。

Q コロナ禍でうまれた商品とうかがいました。開発の経緯は?

オリンピックを見据え、里芋「伊予美人」を使った甘くないかりんとうの「ポリポーリ」(※2014年にはANA機内のおやつに採用されたことも!)の、もんじゃ焼き味を商品化しました。

ところが、発売日の2020年2月1日を待たずしてコロナが発生。東京に向けて、駅、空港、はとバスなどに卸すことが決まっていたのですが、それが全てなくなりました。商品は全て完成し、生産のための連続フライヤーも導入した直後。これは大変なことになると思いましたね。

それで、フライヤーを使う他の商品を考えられないかと、かき揚げやコロッケやいろいろ試行錯誤した末、たどりついたのがカレーパンです。試作から約3カ月間で製品化しました。

▲カレーパンの生みの親ともなった、「ポリポーリ」東京限定もんじゃ焼き味。
▲カレーパンは、南北を県道で挟まれる立地を生かしてドライブスルーでも購入可。「観光バスが来なくなったのでドライブスルーにしました」と越智社長。なんでもチャンスに!

Q スピード感がすごいです! 商品としての手応えを得たのはいつごろですか。

試作の段階で、「これはいける」と思いましたね。経営している「手打ちうどん長兵衛」の和風カレーをベースにしていて、あとはこれに合う具材を工夫するだけだと。

ただ、ここで売っていくには限界があります。なにか起爆剤が必要だと思っていたときに、「カレーパングランプリ」を知り、応募しました。でも、昨年の「金賞」は2位みたいなもの。今年はグランプリをねらって、もう一度参戦します。

▲「本気のカレーパン」3種(じゃこ天、ウインナー、半熟たまご)のうち、「じゃこ天」と「半熟たまご」が金賞を受賞。

Q 2022年も参戦されるんですね!

実は、試作段階でこれは冷凍にして販売したいと考えていまして。それがあれば、全国の人に手にとってもらうチャンスが広がります。ちょうどそのパッケージがあがってきたところで……

▲冷凍カレーパン「carit  to carry(カリットカリー)」(参考上代1個400円 ※税別)。レンジで温めてトースターで焼けば、3分でリベイク完了。お手軽!

Q 冷凍のカレーパン! これはすごく助かります。

昨年、東京の商談会などにもこれを持っていったんですが、受賞をきっかけに私どものことを知ってもらえていて、日本武道館の売店を経営する方には「すぐ仕入れたい」と言っていただけました。県内外、東京のスーパーや生協さんでもそろそろ販売が始まっていると思います。

冷凍は、まずじゃこ天とウィンナーから。残念ながら、半熟たまごの冷凍はなかなか難しくまだ研究中です。技術的には可能なので、必ず商品化したいと思っています。

愛媛にこだわり、あめにこだわらない商品づくり

▲贈り物や手土産にぴったりの、さまざまなお菓子が並ぶ別子飴本舗さん店内。

Q もともとは老舗のあめ屋さん。コロナ禍、やはりお土産は苦戦されていますか?

お土産は全く売れないです。これはもう本当に。いろいろな方から、「もっとしっかりあめを売ってよ」と言われることもあるんですが、今は手の打ちようがない。観光産業が戻ってきたらまたあめも売れていくのですが、今は「おうちで食べよう」に注力して、できることをやっていくだけですね。

実は、カレーパンに続いて、2月1日にはお菓子パン「まんまーる」が発売になりました。

カレーパンは週1回食べたらいいほうですよね。食パンなら毎日食べられるかもしれないけど、でも食パンはいろんな種類がもうたくさんある。ですから、私たちは”おやつ食パン”という形で、これもできるだけ愛媛産の素材にこだわって作りました。お子さんから年配の方まで、手軽に食べられるサイズです。

▲おやつ食パン「まんまーる」。七福芋ほか、大納言、国産栗、黒糖、プレーンの5種。パッケージもかわいい! 大1個350円、小1個200円(※ともに税別)

「ポリポーリ」から始まって「まんまーる」へとつながるわけですが、商品開発としてはこれで一段落。これからはしっかり売っていく段階です。私どもは決してパン屋になろうとしているわけではなく、あくまでも私たちの商品の強みを生かして、人口の多いところで勝負していきたいと思っています。

未来につなぐ地域の歴史、地域の味

Q 愛媛県産にこだわり、あめにこだわらない商品作りがさすがです。これからも地域密着は変わらず?

もちろんです。愛媛にはいいものがたくさんありますから。いい食材をうまく使う。そうすると、じゃこ天屋さんもウィンナー屋さんも、生産者さんみんな喜んでくれますしね。考えると、愛媛で一つのチームみたいなものなんですよね。

▲ポリポーリは普段廃棄されてしまう親いもを使用し、食品ロスにも貢献しています。

だけど、設備投資はこれからも続くでしょうし、人と機械を共存させていかなくてはならない。だから、勝負はこれから。

側から見たら「楽しそうですね」なんて言われることもあるんです。確かに、面白そうだし、目標を持ってやっているようにもうつるかもしれないですが、そんな生やさしいものではない(笑)。瞬間冷凍機を導入したり、人を増やしたり、やることは山積みです。

今がやっとスタートライン。「ピンチはチャンス」と言えるようになるまでは頑張りたいですね。

▲昭和時代のデザインが復刻したレトロ袋入りの別子飴は、ちょっとしたプレゼントにおすすめ♪

Q 最後に、別子飴を通じてずっと地域を見つめてこられました。改めて地元の魅力はなんだと思いますか。

「新居浜は行くとこないよね」ってよく言われますが、新居浜にも、他にはない良いところがあるんですよ。産業遺産の別子銅山を筆頭に、広瀬公園、山根の別子銅山記念館。行ってみたら勉強になったり、住友の歴史は日本の歴史だなと気づいたり。他の町にはないものが、やっぱりある。

太鼓祭り以外にも、知ってもらえることがあるし、もっとできることがあると思います。その魅力を知らせることが大事。私どもはお土産という商品を通じて、それをやっていきたいですね。

▲7代目越智秀司社長。「一番大事なのはつぶれないようにすること(笑)。別子飴を次の世代に繋いでいくのが使命です」

情熱的に、けれど沈着に。文字通り、ピンチをチャンスに塗り替えていく越智社長のお話を聞いていたら、こんな老舗がある地元をまた少し、誇らしく感じたのでした。

余談ですが、現在の別子飴本舗さんの基礎を築いたとも言われる4代目は、大正13(1924)年に満州の首都奉天、現在の遼寧省瀋陽市に渡り「正ちゃん飴本舗」を設立。関東軍へのあめやお菓子の納入で一旗あげたそうです。

そしてまた、私のもう一つの実家、中国出身の夫の故郷も遼寧省瀋陽市。今も気配が残る旧・日本人街に、別子飴本舗の源流とも言える店があったなんて。

取材後、一つ夢ができました。また瀋陽に戻ったら、そのお店があった場所を探り、そこで別子飴を食べること!

越智社長、ありがとうございました!

(取材・文・写真/高田ともみ 一部写真提供/別子飴本舗)

【今回の取材先】

株式会社別子飴本舗 TEL:0897-45-1080

HP http://be-ame.co.jp/

オンラインショップ http://besshi-ame.shop-pro.jp/