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農家×クリエイターが生んだ”芸術”。
はがた農園ギフトボックスが広告賞CCEグランプリ受賞!

2023.03.09

県内最大級の広告クリエイションを賞する「CCE AWARD 2022」にて、はがた農園のギフトボックスがグランプリ&パッケージ部門賞&県民審査員賞をトリプル受賞。

このニュースを聞きつけて、やってきたのは新居浜市船木にある、はがた農園です。

園主・波片仁志さんの依頼で、ギフトボックスのデザインを手掛けたのは、新居浜市を拠点に活躍するデザイナー、吉田菊美さん。

この美しいプロダクトは、一体どんなプロセスを経て生まれたのか。
今回は、農家×デザイナーという異業種クリエイター対談でお届けします!

(以下、波片さん=波、吉田さん=吉)

▲「はがた農園のにんじん」ギフトボックス(撮影:安藤圭次郎)

Q まず、このギフトボックス制作のきっかけを教えてください。

: 野菜の高価格帯の商品を作ろうとしたのがきっかけです。原材料費が高騰していく中、野菜の値段は決まっていて、例えば野菜を詰め合わせにして売っても価値は変わらない。農家として経営を考えた時、価値のある商品をつくりたいと。

それで思いついたのが「贈り物」です。贈り物って、お金使いますよね。贈る側としては、贈って恥ずかしくないものを贈りたいし、贈られる側は、モノと一緒に相手の気持ちも受け取る。値段以上に「気持ちのやりとり」ができると考えて出てきたのが、ギフトボックスでした。

▲波片仁志さん。取材は、青空の広がるはがた農園にて行いました。

Q 一昨年のお漬物プロジェクト(※)以来、お二人のコラボは2度目ですね。

: うちで商品開発しようと思ったら、もう吉田さんしか思いつかなかった(笑)。すでに「お漬物プロジェクト」で吉田さんのクリエイティブを知ってましたし、吉田さんっていい意味でデザインに対して”変態”なところがある(笑)。その才能を発揮して、またいいものを作ってくれるんじゃないかという期待がありました。

: 波片さんからご依頼があった時、「農家とクリエイターの掛け合わせで広がるものを見てみたいから、自由にやってほしい」と言われました。私も、すでに波片さんがどういう想いで農業をやってらっしゃるかを知っていたので、もう「やろう!」って思いましたね。

▲吉田菊美さん。受賞の記念品としてもらったサイン入りボールを手に。
▲(※)「お漬物プロジェクト」とは、学校給食へ一級品の野菜を卸すため、はがた農園の野菜でお漬物をつくって販売、その売上を野菜を育てるための経費に充てるという、地産地消・循環型プロジェクト。地域在住のクリエイターたちとコラボしたことも話題を呼び、メディアにも多く取り上げられました。

Q デザインコンセプトは「土から生まれた芸術」。これはどのように生まれたのでしょうか?

: 最初は、他の野菜やお漬物を一緒に入れたりいろいろ考えていたんです。でも、やっぱりインパクトが欲しかった。これは、にんじんしか入っていないんです。ふたを開けた時に、にんじんの香りや発色の良さ、野菜を五感で感じられるようなものにしたいというのは、最初に吉田さんに伝えました。

: そうでしたね。よくある野菜ボックスだと、ふたを開ける前に大体中身の想像がついてしまいます。だから、今回は野菜っぽくないものにしたいと思いました。太陽のイラストのモチーフになっているのは、にんじんの断面です。それを透明な箔押しにして高級感を出しました。光の角度によっては金や銀など微妙に色がついて見えたりもします。

▲橙色のにんじんが映える深い松葉色のギフトボックス。はがた農園のにんじんは、とにかく身がぎっしりで優しい甘みが広がるのが特徴。(撮影:安藤圭次郎)

Q 「芸術」というキーワードにピッタリですね。

: にんじんをよくよく観察してみたら、葉っぱや根っこ、いろいろ表情が違う。見ているうちに、小さい種がここまで大きくなるって「すごい…」という気持ちになってきたんです。

天候にも左右される中、野菜って一朝一夕で生まれるものではないし、努力がいつでも身を結ぶものでもない。それって、絵を描いたり彫刻作ったり、職種関係なくそうだなと。今回は野菜だったけど、これはもはや芸術のようだなと感じたんです。それがあのデザインとコピーになって生まれました。

Q:波片さんは、出てきたものをご覧になっていかがでしたか?

: 吉田さんが「はあはあ」言いながら(笑)サンプルを見せてくれたんですが、自分が表現したいことをそれ以上に表現してくれたと思いました。にんじんを引き立てるだけではなく、トータルで一つの作品になってほしいと思っていたので、本当にそのまま形になっていましたね。

:う、うれしい……。

▲ボックス全体像。制作してくれた新居浜の箱屋さんへのリスペクトも込め、ラベルにはマスキングテープを使い、きれいに剥がせるよう配慮。(撮影:安藤圭次郎)
▲お漬物プロジェクトのパッケージ。こちらも同アワードパッケージ部門で県民審査員賞を受賞。(撮影:安藤圭次郎)

Q 結果、見事グランプリ他を受賞。反響などいかがですか?

: 僕自身は、エントリーした時点で「ぶっちぎりで優勝」だと思いましたよ(笑)。賞を受賞したことで作品として認められたような感覚です。逆にプレッシャーですよ。1本でも形がそぐわないものがあったら全体のバランスが崩れる。この箱に見合う野菜を作らないとって思いますね。

: 私も、仕事が増えたとかわかりやすい変化はないんですけど、打ち合わせで「にんじんの人ですよね?」って聞かれたりするようになりました(笑)。知ってもらえているというのは嬉しいですし、発注するお客さんにとっての安心材料にはなっているかなと感じます。

: この結果はゆくゆく形になっていくと思います。都会と違ってすぐに仕事に結びつくわけでもないし、反応も遅いけど、その分スパンが長い。田舎だからこそ、どれだけ長く愛されるものを作れるか。この結果を「育てていく」という感じですね。

▲ギフトボックス制作メンバーと。撮影を担当した安藤圭次郎(右)さんも、お漬物プロジェクトからのメンバー。(撮影:安藤圭次郎)
▲ギフトボックスに同封するパンフレット。ページごとに、にんじんが成長していく物語を表現。まるでにんじんの写真集のよう!

Q お二人が見せてくれたことを通じて、地域でももっと面白いことができそうな気がした人もきっと多いと思います。最後に、今後何かやってみたいことがあったら教えてください。

: 形にこだわらず、異業種の人と仕事していきたいなと思いますね。ノリとしては身内でもいいんだけど、ビジネスモデルのようなものを残せたり、必ず結果を出せる「文化祭」のようなこと。

社会の仕組みというと大きいですが、例えば給食の仕組みも、もっといい形に変えていきたい。農家ひとりでは変わらないし、そこはクリエイターや議員や、いろんな業種の人と捉われずコラボして、楽しくやっていきたいっていうのは思います。

: あの、ちょっと変なこと言ってもいいですか…(笑)。私は、デザインでうねりを起こしたい。町おこしというと簡単だけど、もっと地元の人と一緒に、新居浜の魅力を知ってもらうことや、地元の人が知らないことを広げるようなことをしていきたいです。

その可能性を、波片さんが気づかせてくれたと思います。一緒にやっていく中で、波片さんの想いにもすごく影響を受けました。私も、やりたいことがあれば動いていいし、声を上げていい。新居浜は、それができる町だと思っています。

▲取材には、いつの間にかお漬物プロジェクトメンバーも合流。

ギフトボックス(にんじん8-10本入り)はシーズン中のみの販売。今後ふるさと納税への登録も検討中だそう。

新しい”芸術”が、またここから生まれる日も近いと予感した取材。「それって難しいことじゃないんよ」と力を込めた波片さんの言葉が耳に残ります。

異業種の掛け合い、もっともっとこの町でおこしていきたいですね。
波片さん、吉田さん、ありがとうございました!

<取材協力>

はがた農園インスタグラム ※ギフトボックスのお問い合わせはDMにて。
https://www.instagram.com/hagatanouen/?hl=ja
Kuuche Design デザイン
https://kuuchedesign.com/

◎取材・撮影/高田ともみ ◎写真提供/安藤圭次郎