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大人も勇気づけられる鯉のぼりの魅力に迫る
日本にはいろいろな行事がありますが、子供の一大イベントといえば「端午の節句」、鯉のぼりです。愛媛にも鯉のぼりメーカーがあります。県内で唯一のメーカー、四国中央市にある村上鯉幟商会さんを訪ねてきました。
紙と深い関わりのあった鯉のぼり
鯉のぼりが誕生したのは江戸時代。武家で端午の節句に子供の健康や活躍を願う行事として、のぼりを立てる風習が以前からありました。立てるのは「武者のぼり」といわるもので武家しか認められません。そんなのずっちーなぁ的な感じで武家に対抗して生まれたのが鯉のぼりだったそうです。竜門と呼ばれる急流の滝を鯉が登り切り龍になったという中国の伝説がもとになっています。
で、紙との関わり。鯉のぼりは昔、和紙でできていたそうです。四国中央といえば、紙のまち。かつては紙産業をアピールする商材として水引とともに鯉のぼりもあったとか。
県内に唯一残る鯉のぼりメーカー
時代が変わり、綿に移行して、その後、今の主流のポリになります。和紙→綿→ポリ、と素材が変わると製法も変化があります。和紙→綿で、絵付けが手書きから印刷に。綿→ポリでも印刷技術が違うみたいで、その都度辞めていくところが出てきます。市内に7軒ほどあったメーカーも、今は村上さんだけになってしまいました。全国でも10社程度しかありません。
村上さんはメーカーとして鯉のぼりを作るだけでなく、四国中央と今治に店舗「人形と鯉のぼりの村上」を構え、ひな人形や五月人形も取り扱っています。
鯉のぼりの作り方
デザインは村上さんが行います。生地は素材メーカーから仕入れ、その原反に鯉の絵柄を印刷するのは印刷会社に依頼します。デザインのラインナップは常に30種類程度あるそうです。
絵柄が印刷された原反が戻ってきてから鯉の形に仕上げます。まずは裁断。そしてグレードの高い商品には鱗などに金付けを施します。その後、縫製をして、金具などを取り付ける仕上げ作業を行います。
原反の大きさは幅120cm、長さ24mあります。鯉の大きさは10mから36cmとさまざま。1本の原反にできるだけ多くの鯉を印刷して無駄を省きます。分業で、今日は裁断を中心にしよう、みたいな感じでやるのが普通ですが、1匹の鯉を付きっ切りで仕上げるとしたら2人で1日はかかるそうです。大変だ!
鯉のぼりにも流行がある
時代によって大きさや形にも変化があります。ビジュアルもカッコいいとか可愛いとか、流行を取り入れながら変更していきます。鯉も種類が増えました。江戸時代の最初の時は黒のみ。そして赤が追加され、青が加わります。その頃から、黒=父、赤=母、青=子の構図ができあがり、家族を表現してていいじゃんってことで定説になります。オレンジとか緑もお子さん増えたら追加するみたいな感じだったそうです。
だんだんとリアルで豪華になってきましたが、世界金融危機のリーマンショックを境に変わります。以前はいいものを作りさえすればよかったのに、コストパフォーマンスが重視されるようになりました。それから、都会で暮らす人が増え、鯉のぼりが小さくなり、数も減ったそうです。かつて、小さい子供がいる夫婦は、両親と一緒もしくは近くに住んでいました。なので、おじい・おばあは張り切って立派な鯉のぼりを買うのです。立てる場所も土地の広いおじい・おばあの家。これが離れ離れになることでなくなってきたというのです。
気軽に触れる鯉のぼり雑貨
少しでも鯉のぼりに触れる機会を増やしたい!と村上さんは鯉のぼりを使った雑貨ブランド「こい屋」を立ち上げました。バッグにポーチ、Tシャツ、アロハシャツ、マグネットやキーホルダーなど、その数100アイテム。中には本物の鯉のぼりを使ったものもあります。
頑張ろうと背中を押してくれる鯉のぼり
鯉のぼりは向かい風が強いほど元気に泳ぎます。まるで逆境に立ち向かっているようです。そんな姿を見て元気になってもらおうと、自然災害に見舞われた地域には全国から鯉のぼりが送られてきます。
空高く舞い上がる鯉のぼりを眺めようと、自然と上を向いてしまいます。そうすると、これまでうつむき姿勢だったことに気づくそうです。「上を向いて頑張らなきゃ」と思わせてくれる、勇気を与えてくれる鯉のぼり。子供のためにだけではなく、大人のためにも、いつもまでも残していきたいと思いました。
(取材・撮影/さんマガ編集部)
【取材先】
「人形と鯉のぼりの村上」(村上鯉幟商会)
〒799-0113
愛媛県四国中央市妻鳥町162-1
TEL 0896-72-8211
URL https://www.suigetu.jp/
こい屋 https://koiya.theshop.jp/
「今治店」
〒794-0028
愛媛県今治市北宝来町3丁目3-19
TEL 0898-31-8814