MAGAZINEプチさんマガ

伊予水引が海外アーティストとコラボ!
伝統文化を子どもたちへつなぐ

2021.12.16

紅葉に包まれた四国中央市新宮町で、えひめさんさん物語フォローアップ協議会主催のイベント「伊予水引 in 霧の森」(2021年11月3日から28日まで)が開催されました。
”伊予水引とスイーツ”、”海外アーティストとコラボ”など、気になるワードを追いかけ、現地を取材。

伊予水引の新しい魅力にどっぷり浸かったこの日を境に、どこか縁遠かった水引の存在が、ぐんと身近なものになっています。

水引の奥深さを知るには、まず体験すべし!

不器用な私にも、できるものなのかな? 

おそるおそる水引を手にとってみたら、意外にもハマってしまいました。基本の「よこ結び」を覚えたら、あとはそれを応用。回したり、通したりの一手間を加えるだけで、あわじ結び、うめ結びと、次々と愛らしい結び目が完成し、思わず取材を忘れて没頭しそうに……。

イベント会期中の2021年11月14日、「霧の森」で行われていたのは「水引結び検定」の模擬体験ワークショップ(水引結び検定とは、水引の基本の結び目を一定のクオリティで結ぶ技術を測る検定。2019年スタート)。

市販のご祝儀袋以外であまり触れることのなかった水引。こんな機会でもなければ自分で作れるとも思っていませんでしたが、案外、できるものなのですね!(もちろんクオリティの話は抜きで)それが嬉しくて、次、また次へと難易度の高い結び目にも挑戦してしまい……。

気付いたら、「水引」の魅力にすっかり引き寄せられていました。縁遠かったはずの水引が、こんなにも身近に、親しみのあるものに感じられるなんて。

▲検定本番では、制限時間10分で級に応じた結び目をつくります。
できた結び目は審査員がサイズやバランスなどをチェックし、合否判定されるのだそう。
▲水引は少し「すごいて(しごいて)」、柔らかくしてから結び始めると扱いやすいと教えてもらいました。 
▲少しずつステップアップして、難易度の高い結びにも挑戦。お手本を見せてくださる先生の手が、水引と一緒に滑らかに動いていく様子もまた、美しかった。 
▲ワークショップでは7級まで合格! 昨年はコロナで開催を見送っていた水引検定は、また来年の夏に再開予定だそうです。

コロンとしたフォルム、縁起の良い紅白の色、結び目の完成品が増えるたびに、「もっと作りたい」意欲が自然とわいてきます。

実際に水引に触れてみて感じたのは、「水引はまず体験ありき!」ということ。

自分の手を動かしてはじめて、私たちの暮らしに溶け込むように、水引は文化としてそこにあったことに、やっと気づけた気がするからです。

海外アーティストとのコラボが開いた水引の可能性 

「今の子どもたちは、よこ結びができる子が少ないんですよね。たて結びになってしまって。どちらの結び方が良い・悪いではないのですが、学用品にマジックテープなどが増えて、結ぶ体験自体が減っているんですよね」

そう教えてくれたのは、ワークショップを伴走してくださったえひめ伝統工芸士の今村八千代さん。地元の伝統を知らないまま成長していく子どもたちにもっと水引の魅力を伝えたいと、伊予水引金封協同組合の一員として、学校などで水引講座やワークショップを開催するなどの活動を続けています。

そんな今村さんらの活動は、今、大きく実を結びつつあります。

一昨年のえひめさんさん物語では、愛媛出身のアーティスト月岡彩さんとのコラボによって伊予水引の作品「白無垢 ~SHIRO-MUKU~」が誕生。県内外で話題となったこの作品をきっかけに、「MIMUSU」というオリジナルブランドの立ち上げや東京での展示会へと発展しました。

さらに、月岡さんのコーディネートによって、今回、伊予水引はいよいよ海を渡ることに。

海外アーティストたちとのコラボ作品たちが展示されていたのは、霧の森敷地内にあるカフェ「茶フェ~ゆるり〜」。スイーツとお茶でくつろぐスペースに、作品たちは惜しげもなく飾られていました。

▲アジアのアーティストたちとのコラボ作品。インドネシアのムルヤナさんの作品は、水引の素材や立体性を生かしながら表現された「仮面」たち。この日はお客さんがいらして撮影できませんでしたが、タイを拠点に活動するパナパット・ タイチャメールコールさんの幻想的な風景の作品も、客席に溶け込むように展示してありました。
▲伝統的なご祝儀袋がずらりと展示されたスペースも。こんなに多様なデザインがあるんですね!
▲水引に取り囲まれながら、お茶とスイーツのコラボレーション。いただきます(笑)。

水引という伝統文化を、子どもたちへつないでいきたい 

「伊予水引を資源に、これから観光にも力を入れていこうという段階でコロナ。お祝いのイメージのある水引もなかなかタイミングが難しく立ち止まらずをえなくなりましたが、今回のイベント、思ったより反響があり、大変嬉しいです」

そう話してくださったのは、イベントの主催者でもある、伊予水引金封協同組合理事長の石川達也さん。イベント会期中は、コロナが少し落ち着き、道の駅「霧の森」にも少しずつ客足が戻り始めたころ。コラボ作品展示の後押しもあり、取材に訪れたこの日もひときわにぎわっていました。

展示に至るまでには、オンラインでのやりとりなどさすがに苦労もあったそうですが、完成した作品を見たときは、その完成度の高さに感動したそうです。

「愛媛、特に東予は伝統工芸品というものが少ない。伊予水引をきっかけに、地元を盛り上げていけたら。そして子どもたちにもこの文化にもっと触れて、継承していってもらえたら嬉しい」と石川さんは意気込みます。

 

▲ふだんお世話になっているご祝儀袋の水引たちが、ものすごく身近なものに感じられたワークショップ後。 
▲会場には、子どもから年配の方までひっきりなしに訪れ、それぞれに水引体験を楽しんでいました。

今度お祝いを贈ることがあったら、自分で作った水引をつけてみたい。

まさか不器用の代表みたいな自分がこんなことを思うなんて。自分の手を動かして、ひと目、ひと目結んでみてわかったこと。それは、水引は「製品」ではなくて「真心」だったんだなあということです。

そして、その一手間は決して、難しいことでもなんでもなかったんですね。

実際、自作の水引の結び目を見ていたら、なぜだかほっと心があったかくなるのを感じました。ものやお金、言葉では到底伝えきれない気持ち。そんなものを、自分で結んだ水引がそっと届けてくれそうな気がして。 

▲紅葉で色づく「霧の森」がある新宮村は、真鍋淑郎さんのノーベル物理学受賞にも沸き、イベントと合わせ活気づいていました。

(取材・文:高田ともみ)

<今回の取材先>

【開催期間】2021年11月3日(水・祝)~11月28日(日)

【会場】道の駅 霧の森 霧の森茶フェ~ゆるり~ 
※展示販売会やワークショップを開催