MAGAZINEプチさんマガ

リサイクル堆肥で環境に優しく、農作物が美味しく

2023.03.28

美味しい料理は食材選びから。農作物なら土づくりが大切です。それがリサイクル品でできたらSDGsな今の時代に合って最高じゃないですか。あるのです。廃棄するものを掛け合わせてできた良質な堆肥を作る西日本砕石さんを訪ねました。

なんとかしなきゃで始めた農業事業

新居浜の四国中央寄りにある西日本砕石さん。その名の通り、道路の下地や建物などに使用するコンクリートの原料となる砕石を製造販売する会社です。2009年頃にある出来事が起こります。時の政権が「コンクリートから人へ」という政策を打ち出しました。公共工事の縮小です。そうなると砕石の使用が減少します。

▲眺め最高の砕石場
▲社長の岡さん

それでも会社としては社員とその家族を守るため、仕事をしなければいけません。何かできることはないか・・・。道路に使っていた火力発電所で発生する廃棄物「クリンカアッシュ」という石炭灰が作物を育てるのにいいことを知り、取り組みを始めました。

▲想像以上に大きいクリンカアッシュ

農業のことはなにも知らなかった社長の岡さん。それでも諦めず、愛媛大学の教授に共同研究を呼びかけます。

石炭灰と茶殻を使い誕生した2つの農業用資材

最初に出来上がったのは、クリンカと山砂を混ぜて程よい大きさに砕いた「耕力砂」。植物の育成に良いケイ酸を豊富に含み保水性・保肥力、透水性、通気性に優れた、多孔質なクリンカの特性を生かした土壌改良材となりました。

▲サッカー場やゴルフ場で大活躍

さらに、愛媛大学の先生からの勧めで、飲料メーカーで出る茶殻を加えることになります。お茶はとても栄養価が高く、茶殻にもいっぱいその栄養が残っていて土の中の微生物を活性化させる堆肥に向いているのです。ですが、茶殻はびっしゃびしゃ。水分が多いのでそのまま堆肥にしようとしても腐ってしまって難しいのです。

そこで通気性の良いクリンカの登場。茶殻にクリンカを混ぜることで水分がうまく抜けて堆肥化することに成功しました。工夫を重ね堆肥化のスピードが上がり、ニオイも低減。とっても素晴らしい「耕力堆肥」が誕生しました。

▲耕力堆肥
▲堆肥製造用の設備

使えばすごさがわかる耕力兄弟

耕力砂と耕力堆肥の兄弟はどちらもとってもすごいのです。

耕力砂は稲作にとってもぴったり。ケイ酸の働きで外皮が硬くなり、害虫にかじられてもびくともしない茎が出来上がります。元気な状態が続けば光合成も活発に。すると、蒸散(植物の体から水蒸気が出ていく現象)もたくさん発生して、気温上昇を抑えることにもつながります。

▲苗を育てる際にも活用

耕力堆肥も優秀です。化学肥料ほど大きくは育ちませんが、一つ一つが元気で甘味のあるおいしい作物に育つそうです。土づくりを大切にしている農家の人が使っています。口コミで広がり、ほとんどの人がリピーターになるそうです。

▲散布の仕方は普通の堆肥と同じ

「農家さんの気持ちがわからなければいい堆肥は作れない」ということで、岡さんも農業を始めました。そして、耕力堆肥を知ってもらうため野菜の販売もしています。

▲エフマルシェで販売

夢は全国に広げること

岡さんの目標は耕力砂と耕力堆肥を全国に広げること。「日本中に砕石場と火力発電所、茶殻があるから不可能ではない」とおっしゃいます。値段は両方とも1トン2800円。堆肥としては破格の値段だそうです。いいものを安く仕入れて、安心安全で美味しい農作物をたくさん作ってほしい・・・。儲かる農業の支援をして担い手を少しで増やしたいと語ってくれました。

▲商談会でたくさんの人にPR
▲農業のある暮らし、いいかも!

(取材・撮影/さんマガ編集部)

【取材先】
「西日本砕石」
〒792-0896
愛媛県新居浜市阿島乙174
TEL:0897-45-0455