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本当は人に教えたくない!
西条で非日常を味わうカヤック&SUP体験。

2021.01.26

「西条をアウトドアの聖地に」と掲げる西条市。このまちで、とびきりのアウトドア体験ができるチャレンジプログラムがあります。

その名も、「視点を変えて自然を感じる、黒瀬湖カヤック&SUP体験」。

11月30日、取材をかねて体験してきたのですが……本当に最高でした!

アウトドア超初心者の私なのに、取材帰りに思わず、アウトドアオアシス石鎚のモンベルストアに寄り道したほどです。笑

大自然の中で味わったカヤック&SUP体験の一部始終、最高すぎて本当は内緒にしたい気持ちを抑えつつ、レポートします!

自分のスタイルで、安全に楽しむ

取材当日、ガイドしてくださる西条アウトドアサービスの上田公彦さんから集合場所に指定されたのは、金子商店前でした。

少し早めに到着したので、お店に入ってみると、なんとも懐かしい雰囲気。女性店主のお人柄もほんわか優しくて、気分良く飲み物を買ってお店をあとにし、上田さんに電話しました。

「そこから車で1分ぐらい、加茂川の上流の方へ上がって来てください。道路左手にいます」

車を走らせ、上田さんと合流。今日の体験を心待ちにしていた私は、道路に置かれていた大きなボートをみるだけでワクワク。と同時に、少し緊張も。

インストラクターといえば、陽気でエネルギッシュな人をイメージしていたのですが、上田さんはいい意味でそのイメージを破る、穏やかなお人柄。

「これ、使ってください」と、薄着だった私にウエアを貸してくださり、私の緊張はみるみる消えていきました。

そこからボートやパドルなどの道具を持って歩き、国道脇の茂みへ。

茂みに隔てられているおかげで、国道を行き交う車も見えず、なんだか異国に来た気分!
茂みを抜けると、加茂川のほとりに到着です。

見てください、この美しさ!

4メートルぐらいの深さでも、川底の小石がくっきり見えるほどの、透き通った川の水。
ライフジャケットを着て、上田さんからパドルの操作の基本や座り方のレクチャーを受けて、いざ! 乗艇!

「自分が楽な座り方でいいです」

そう促され、正座してみたり、あぐらをかいてみたり。自分が楽なスタイルを探りながら座り、パドルで一漕ぎ、二漕ぎ。川の上を魔法のじゅうたんのように進んで行くのが、なんとも楽しい!

上田さんのガイドは、あれこれ 口も手も出しません。

「あれしてこれしてばかり言われたら、楽しめないでしょう? 無理せず、自分のスタイルで」

それが上田さんの信条なのです。

いっぽうで、水の怖さを伝えることも大切にされています。

今まで水難事故が多かった西条市。それは水という存在が身近すぎて、水の怖さを学ぶ機会がないからでは、と語る上田さん。

「こうした体験の中で遊びながら、川の怖さや自然を学ぶ機会をつくっていけたら」

西条市で安全に水辺のアクテビティを楽しむ。そんなアウトドア文化を根付かせることが、上田さんの想いです。

青く透き通る水、なだらかな川

「支流の方へ進んでみましょうか」

上田さんの声かけでパドルを漕ぎ、ゆっくりついて行きます。

進むにつれ、川の色が青く、透明に代わり、水面に映る自分が見えるほど。

本流と支流では、水の色が全く違って不思議です。

「次は上流に出てみましょう」

進路を変えた上田さんに従い、岩を避けながら、流れに逆らい、この日行ける限りの上流ポイントへ。

「ボードの上に仰向けになって寝ると気持ちいいですよ」

言われるがままパドルをおなかの上で休めて寝ころがってみると、これが本当に気持ちいい!

背中の位置が水面とほぼ同じで、川面に直接寝ているような不思議な感覚。なだらかな川がつくる穏やかな揺らぎに誘われ、うたた寝してしまいそうです。

水上でコーヒータイム!?

寝っ転がったまま、先ほどのスタート地点まで流されてきました。起き上がって、今度はさらに下流へとパドルを漕ぎます。

川の深さのあるところで大きなコイが悠々と泳ぐのを見たり、周りの木々に目を向けると野生のリスを目撃したり。もはやジャングルクルーズ!

楽しみまくっている私の横で、上田さんがなにやら木にロープを巻きつけています。

何をするのかな?と見つめていたら、「休憩しましょう」の提案が。

パドルでボート同士をつないで固定したかと思えば、手際よくコーヒーを淹れてくれたではありませんか!

コーヒーはパドルを使って運ばれて来ましたよ。

少しパドルを漕ぎ疲れ、川に浮かびっぱなしでちょっぴり冷えていた身体に、上田さんの淹れてくれたコーヒーが染みます〜。

聞こえてくる、木々の揺らぎ、鳥のさえずり。なんて至福のコーヒータイム。どこで飲むコーヒーよりもおいしく感じます。

「地元で焙煎しているコーヒーです。アウトドアだけでなく、少しでも西条のことを知ってもらえたら」

山、川、海が一つに詰まったまちへ

西条市起業型地域おこし協力隊として、2019年の春に西条市に移住した上田さん。それまでは、大阪のアウトドア店で働きながら、紀伊半島を拠点にガイドとして活動していました。偶然声をかけられた西条の地域振興に興味を持ち、西条市を訪問。そこで目にした、山、川や海の自然が一つのまちにギュッと詰まった西条に魅力を感じ、移住を決めたそう。

そこから上田さんは、1年かけて西条の川や山の特徴をリサーチ。アクティビティ事業「西条アウトドアサービス」の運営をスタートさせ、今に到ます。

上田さんがはじめるまで、水辺のアクテビティを事業としている人はいないなかったそう。

それは、山から平地までの距離が短いために水の流れが速くなってしまうことや、水の量が少ないことなど、一般的な水のアクティビティを楽しむには不向きな状況があったから。

この状況を逆手にとり、水の流れを利用して楽しむアクテビティではなく、水辺から見える自然を楽しむアクテビティを作っていくことにしたのです。

木々の色づきを感じながらカヤックで川を渡ったり、流れに身を任せてうたた寝をしたり。上田さんは、そんな癒やしの非日常体験を提供。水辺だけでなく、水の源である森林の保全にも参加し、トレッキングコースを開拓するなど、アウトドアガイドとして幅広く活躍されています。

そんな話を伺いながら、コーヒーを飲み終えると、身体も心もポカポカに。

ラストは、SUPにチャレンジです!

アメンボみたいに

Stand Up Paddleboard(スタンドアップパドルボード)の頭文字をとった「SUP(サップ)」。文字通り、ボードの上に立ってパドルで漕ぐ、というもの。

ちょっとSUPに憧れを抱いていた私。最初はボードの上で膝立ちして、それからゆっくりと立ち上がってみます。

上田さんの見よう見まねでパドルを漕ぎ出すと、アメンボのように湖面をスーッ。それがなんとも爽快で、大興奮でSUPを楽しみます。

が、やはり立っている分、カヤックほどの安定感はなく、もう満足。安心して心穏やかに風景が楽しめる、カヤックポジションにすぐ戻りました。

あっという間に、約2時間のカヤック&SUP体験が終了。水の上を自分の庭のように散歩できる開放感は、一度体験すると病み付きになる心地よさでした。

「水量や水質によって、行ける場所が変わりますし、同じ場所でも、季節が変わると見える景色も変わります。飽きませんよ」

自然、まち、人を想って

セミオーダーで、小さな子どもから、アクティブに楽しみたい学生、のんびりしたいおじいちゃんまで、その人が一番楽しめる形で提案してくれる上田さん。

過去には、1歳半の子どもを受け入れたケースや、三世代9人のご家族で楽しむケースもあったそう。

参加者の多くがリピーター、そしてお客さんからの口コミ、というのも納得です。親子で参加して、今度はゆっくり一人で参加するママも多いのだとか。その気持ち、同感です!

そして驚くのは、このプログラムの参加料が、大人も子どもも一人たった3000円だということ! 一般的な価格帯よりリーズナブルな料金設定。体験した私個人の感覚としては、「このお値段でいいのですか?」な満足感です。

そもそもこうした水辺のアクティビティに小さな子どもを受け入れてくれること自体、めずらしい気がします。

「兄弟みんなで楽しめるアクティビティって、案外少ないと思うんです。その点、ウォーターアクティビティは、体力差が少ない。家族の思い出づくりを手伝いたいと思っています。

それに、個人的にはそこまで楽しめるフィールドではないのでこの価格にしています。その分、西条市内で買い物をしたり、おいしいものを食べたりしてもらえれば」

活動を通じてまち全体に潤いをつくりたい。そんな上田さんの想いを感じずにはいられません。金子商店さん前を集合場所にされていた意味を、じんわり感じる瞬間でした。

体験し終えたばかりなのに、早くまた体験したくて仕方ない。こんな気持ちははじめてです。

きっとそう思わせてくれたのは、西条の美しい自然、そして何より、自然、まちや人への心遣いを感じさせてくれる上田さんのお人柄です。

この最高の体験を、皆さんもぜひ。

(文・写真:高橋陽子)

【今回の取材先】
チャレンジプログラム 
視点を変えて自然を感じる、黒瀬湖カヤック&SUP体験
日時:予約制(冬シーズンは応相談)
参加料:3000円/1名(2名〜)
予約など詳しくは、インスタグラム saijooutdoorservice へ。
お問い合わせ:西条アウトドアサービス 上田 TEL 090-4986-0920