MAGAZINEプチさんマガ

赤と黄色のひまわりが織りなす、とっておきの物語。

2021.09.24

夏になると、全国津々浦々に現れる「ひまわり畑」。
黄色いひまわりが真っ青な空に向かって咲き誇る風景が、夏!って感じですよね。
そんな中、西条市のひまわり畑で開催されるイベントが話題を呼んでいます。
その名も「さんさんサンフラワー物語」。
なんとそこには、赤いひまわりも咲いていると言うんです。
この目で確かめるべく、8月7日と8日に開催されたイベント初日に行ってきました!

ただのひまわり畑じゃない、赤と黄色のアート

カーナビゲーションを頼りに走っていくと、飯積大橋に到着。橋を歩くカップルや家族連れが、ひまわり畑の近さを教えてくれました。

橋からもはっきりと見えるひまわり畑。

この日はうだるような暑さでしたが、会場には大勢のお客さんの姿が。

河川敷に下りると、見ごろを迎えたひまわりたちに出迎えられ、一気にテンションがあがります。

そしてありました! 赤いひまわり!!!
赤いひまわりに驚くばかりか、このひまわり畑はなんと、「ひまわりアート」になっていたんです。

▲高所作業車からのひまわり畑

わかりますか?
東京五輪のエンブレムにちなみ、黄色と赤が市松模様になるように植えられていました。

2019年から赤いひまわりの栽培とアートに挑戦

「さんさんサンフラワー物語」を企画・運営するのは、ひまわり畑西条の三浦房子さん。えひめさんさん物語のチャレンジプログラムとして、2019年からこのイベントをはじめました。それ以前も、ここ渦井川河川敷では、地元自治会が三世代交流プロジェクトとして20年間黄色いひまわりを咲かせ続けてきたそう。えひめさんさん物語を機に、三浦さんが念願だった「赤と黄色のひまわりを咲かせる」企画をスタートさせました。

「以前、友人からもらった赤いひまわりの種を育てたとき、大輪の深紅の花が咲いたんです。その美しさにひかれ、いつか赤と黄色のひまわり畑をつくりたいと思っていました」

せっかくなら大勢の人に見てもらいたいと思った三浦さん。でも、ここのひまわり畑は1200平米と決して広くはないため、工夫しないと見に来てもらえないと思い、企画したのが「ひまわりアート」だったそう。

三浦さんの想いに共感した有志のメンバーと、初年度は地元自治会や高校生ボランティアらの協力も得て、赤と黄色のひまわりでストライプ柄を描きました。

▲2019年はマルシェも開催

「2019年は、ひまわりアート鑑賞に合わせてマルシェも開催したので、かき氷が飛ぶように売れるほど大勢の人にお越しいただきました。『赤いひまわりを初めて見る』と言う人がほとんどで、来年も楽しみと言っていただけたのに、2020年はコロナの影響で中止に。だから、規模は縮小となりましたが、今年は開催できてよかったです」と三浦さん。

ひまわりアートのデザインも、ご自身が担当されています。ストライプは目立ちにくかったという反省を生かして、今年のデザインは市松模様に。メンバーらは、6月12日に8,000粒の種まきを終え、生育不良の苗を植え替えながらデザインを整えていきました。やがて、7月下旬ごろから咲き始めたひまわりの生育状況を見て、イベント開催日を決定。今日を迎えました。

「本当は、赤も黄色も一輪咲きのひまわりでそろえたかったんです。複数咲きだとどうしても方向がそろいにくいから。でも、赤いひまわりで一輪咲きの品種が日本にはなくて」と三浦さん。

ひまわりアートを、しかも赤と黄色でつくるからこそ上がる難易度。品種の違うひまわりを、同時に咲かせることさえ容易ではありません。「ひまわりも生き物だから本当に難しい。今年もまだまだ理想の完成像には届かなかったですね」という言葉に、三浦さんのデザインへのこだわり、ひまわりアートの難しさを感じました。

自らを「作業班」という男性メンバーにも大変だったことは?と聞くと、「水やりかな」の返事。毎朝、近所の事業所に水道を借りて、ポリタンクでここまで運び、ジョウロに移して水やりをしてきたそう。

「種を植え終わった後、芽が出て育つまでが大変なんです。ひまわりは乾燥が好きな植物だけど、初期は水が必要だから。ここは水はけがよすぎて、種まきをしたときは雨が少なくて心配でした」

水やりの他にも、ひまわり畑アートがよく見えるようにするため、畝全体とそれぞれのひまわり間、さらに、通路の雑草引き作業が欠かせませんでした。メンバーを中心に、地区の人にも手伝ってもらいながら、畑の手入れし続けました。「我が子を育てたような気持ち」と満面の笑みを浮かべる男性メンバーの表情に、充実感がにじみます。

そうして完成した、赤と黄色およそ3000本のひまわりアート。

次々訪れる来場者は、散歩したり、ひまわりと背比べをしたり、記念撮影をしたりして、思い思いに楽しんでいました。

こちらのグループは、四国中央市から電車に乗って来てくれたベトナムからの研修生です。

ひまわりを摘んで持ち帰ることもできる

ひまわりアートへの想いや苦労話を伺い、しみじみひまわり畑を見つめていると、花切りバサミでひまわりを摘むお客さんの姿も!
(ええっ!? こんなにきれいに咲いているのに、しかもひまわりアートなのに大丈夫……!?)
心配な気持ちになりますが、大丈夫。今年のさんさんサンフラワー物語は、「ひまわり摘み」がひとつの体験イベントなのです。好きなひまわりを、好きなだけ自由に摘める体験に、子どもも大人も(むしろ大人が)大喜び!

そんな姿を見ながら、「枯れる前に、みんなの家でひまわりパワーを咲かせてほしい。喜んでくれるのが一番」と三浦さん。「よう出世して、巣立ってくれた」と我が子のようなひまわりを、誇らしげに送り出す作業班の男性。

持ち帰る花束用には、メンバーたちが茎の部分に水を含ませたティッシュを巻いて、保水処理までしてくれます。

「ちょっとのことだけど、やっぱり違うからね。特にひまわりはすぐにクタッとなっちゃうから」

メンバーの皆さんから感じる、きれいなひまわりを咲かせるために、みんなに笑顔を届けるためにという想い。だからこそ、このひまわりを見た人は、元気をもらうのかもしれません。

情報誌を見て松山市から訪れていた家族連れは、「夏休みにどこにもいけないので、こんなにひまわりがきれいなところに来られてよかった。とっても魅力的なイベントでした」と語っていました。

ひまわり摘みは大盛況。あっという間に、初日分のひまわりたちが巣立っていきました。
その一部は、私の家にも。部屋をパッと明るく照らす赤と黄色のひまわりを見るたび、「さんさんサンフラワー物語」でいただいたものの大きさに、胸がいっぱいになりました。

それは、ひまわり畑西条のメンバー、地元の人たち、お客さんたちみんなが作り上げる、とっておきの「物語」。

すてきな物語をはじめてくれた、ひまわり畑西条の皆さんのお顔写真を紹介したかったのですが、「私たちはいいから」と遠慮され、「ひまわりが私たちの笑顔です」と。

ひまわり畑西条の皆さん、本当にありがとうございました。
できればまた来年も、その笑顔にお会いできますように。

(文:高橋陽子、写真:三浦さんご提供、高橋陽子)



【今回の取材先】

チャレンジプログラム 「さんさんサンフラワー物語」
日時:2021年8月7日、8日
場所:渦井川河川敷飯積大橋のすぐ下
ひまわり畑西条URL:https://himawarisaijo.localinfo.jp/pages/2545314/page_201603171850
お問い合わせ:ひまわり畑西条 三浦房子 TEL 090-6160-3240