MAGAZINEプチさんマガ

もっと地域に愛される銘菓へ。
発売90周年「たぬきまんじゅう」がキュートにリニューアル

2023.03.17

買い物をしていて、ふと目があった”たぬき”パッケージたち。

そのつぶらな瞳に心を奪われ、遠方に暮らす親戚に送ろうと決めたのはつい最近のこと。

「お前、あのたぬきまんじゅうだったのか・・!」と、それが子どもの頃から親しんできた懐かしいあのお菓子であることに気づいたのは、手に取った後のことでした。

キュートにリニューアルした「たぬきまんじゅう」を追いかけ、西条市は石鎚神社のふもとにある「たぬき本舗株式会社」の専務、森貴則さんを訪ねました。

▲石鎚神社にて、新しくなったたぬきまんじゅうパッケージを並べてパチリ。

劇的な復活を遂げた「たぬきまんじゅう」

たぬきまんじゅうにまつわる、ここ数年の劇的な復活ドラマについては、東予にお住まいならご存知の方も多いかもしれません。

じっくりと練り上げた粒あんを、口どけの良いまろやかな桃山生地でつつんだ、たぬきまんじゅう。一口サイズの食べやすい大きさ、やさしい甘みで、創業から90年、地域の銘菓として親しまれてきました。

しかし、「たぬきまんじゅう」は、先代に後継者がいなかったことから2018年に一度廃業。「なんとしてもたぬきまんじゅうを守りたい」と動いたのは、森さんのお父様であり、西条市で森スポーツを営まれていた森達正さんだったのでした。

「今いるこの場所は、うちの祖父が、元々「お山市」(※​​7月1日から10日間行われる石鎚神社の夏季大祭)でお土産屋をしていた時の、店舗のあったところなんです。そこでたぬきまんじゅうも販売していたので、私自身も子どもの頃からすごく好きなおまんじゅうで。なくなってしまうのは寂しいと、父から声をかけてもらい家族総出で事業を引き継ぐことになりました」

その後、数ヶ月の準備期間を経て2018年10月に会社を立ち上げ。投資家や市民を巻きこんで、懐かしのCMを再現するなどの一連の復活プロジェクトは地域でも大きな話題を呼びました。

先代から活躍する職人さんたちが残ってくれたことで、手作りされる昔ながらの製法も守られました。今もこうして私たちがたぬきまんじゅうを手に取れるのは、森さん一家の並々ならぬ決意のおかげなのです。

▲昔ながらの製法で作られるたぬきまんじゅう(写真提供:たぬき本舗(株))

90周年を迎えてパッケージがリニューアル!

「会社を設立して2年目からコロナが始まって、ここ数年は本当に苦戦しました。元々、私たちも全く異業種から参入したわけなので、最初はわからないことばかりでした。スーパーさんに取り扱いをお願いしに行っても、”掛け率”って何?という状態でしたから(笑)。現場で教えてもらいながら、少しずつ軌道に乗ってきたという感じです」

コロナで打撃も受けたといいますが何とか持ちこたえ、たぬきまんじゅうは2022年、無事に発売90周年を迎えます。

そこで、森さんが決断したのが今回のパッケージのリニューアルです。

▲以前のパッケージデザイン。懐かしい。(写真提供:たぬき本舗(株))

これまでのイラストは、『ビッグコミック』の表紙イラストで有名なイラストレーターの故・日暮修一さんが30年前に手がけたもの。

貴重なイラストであることに変わりはないけれど、時代の変化に応じて、新しい世代に向けてもたぬきまんじゅうを発信していきたい。森さんにはそんな想いがありました。

「私たちにとっては、美味しいのに届かないというのが一番残念なこと。お土産屋さんに置いてあってもあまり目立たないのも気になっていました。90周年を迎えるにあたって、インパクトがあって、大人から子どもまで楽しんでもらえるような女性メインの子育て層をイメージしてリニューアルをかけました」

▲印象がガラリと変わった新パッケージたち!(写真提供:たぬき本舗(株))

できることは自分たちの手で

最初は、”和モダン”やシンプルなデザインも想定していたそうですが、デザイナーさんとやりとりするうちに、インパクトのあるものを作りたいと、現在のキャラクターデザインに決定。

まんじゅうを包む薄紙には、遊び心のいっぱいのいろんな表情が描かれ、若い世代や子どもたちのハートもガッツリつかんでいるようです。

(写真提供:たぬき本舗(株))
▲お皿に並べるだけでもおやつの時間が盛り上がります♪

「反響は結構大きいですね。かわいくなったねとよく声をかけていただきます。実は名前もあって、定番の「こざえもん」、いちご味の「ちーこ」、抹茶味の「ちゃちゃまる」というんです。おかげさまで、空港やスーパーなど取り扱ってくれるところも増えました」

驚いたのは、森さん、「できることは自分たちでやろう」とデザインを独学。なんと、喜左衛門狸の後ろ姿が描かれたたぬきまんじゅうロゴは森さん自ら制作したのだそうです。

何パターンも試作しながら、たぬきの尻尾に石鎚山が描かれた、ころんとしたフォルムが生まれました。

▲森さんが制作したたぬきまんじゅうロゴ(提供:たぬき本舗(株))

また、「定番の味は守りながら、いろんな味のたぬきまんじゅうをつくっていきたい」と話す森さん。限定ものも含め、アイディアはひとつずつ形にしていきたいと話します。

90周年に合わせて仲間入りした「いちご」味は、地元の西条市産のいちごを使用。自然な甘みと香りがふんわりと口の中に広がり、定番のたぬきまんじゅうに負けないおいしさです。

さらに、今年はなんと「みかん味」が新しく登場予定だそう! 今は絶賛試作段階中。みきゃんパッケージのたぬきまんじゅうが各地のお土産屋さんを盛り上げる日も近そうです。

▲試作中のたぬきまんじゅうみかん味パッケージ

100年愛され続けるおやつへ

劇的な復活ののちに迎える100周年はどんな盛り上がりを見せるでしょうか。末長く愛されるたぬきまんじゅうにしていくためにも、販路を広げていくことが今度の森さんの目標です。

一方で、職人さんの高齢化、製法技術の継承はこれからの課題。「一番上の職人さんで70代。若い世代にも製作に携わってもらえるよう、職人の育成も考えていきたいと思っています」。

県外に暮らす家族に送る荷物に、そっとしのばせたくなる、たぬきまんじゅう。そんな声をもらう時、受け継いでよかったという気持ちがわきあがると言います。

「変わるもの、変わらないものを見極め、地域の味を守っていきたい」。

店舗に飾られていた、先代から受け継いだのれん。その文字を見ながら、石鎚神社のふもとで、今もこうしてたぬきまんじゅうが手に取れる幸せに感謝の気持ちがあふれるとともに、地域住民としてもたぬきまんじゅうをしっかり応援していきたい、と感じた取材でした。

みなさま、おやつやお土産には「たぬきまんじゅう」をぜひ。きっと、みんなに笑顔が広がります。

森さん、ありがとうございました!

<インフォメーション>

たぬきまんじゅう石鎚本店
HP:https://tanukimanju.shop/
西条市西田甲450−1
TEL: 0897-66-8090
FAX 0897-66-8091
営業時間 9:00~18:00 定休日 なし

<取材・撮影/高田ともみ 写真提供/たぬき本舗株式会社>