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周桑手漉き和紙と漆でつくる漆器「田中漆工房」

2023.02.11
▲ゆるやかな曲線が魅力の「わしき」

愛媛県指定伝統的特産品及び、西条市指定伝統的特産品に指定されている「周桑手漉き和紙」。

その周桑手漉き和紙と、漆を組み合わせた「わしき」。

愛媛県東予の素材を使った、地元ならではの器について、田中漆工房の田中智之さんにお話を聞いてきました。

▲一見すると紙でできているようには見えない

京都伝統工芸大学校の体験キャンパスで、漆の魅力に出会う

もともと、田中さんのお父さまは、周桑の手漉き和紙の職人でした。しかし、お父さまは早くに亡くなられたため、直接指導を受けられませんでした。
年齢を重ね、どのように生きていこうかと考えた時に、お父様と同じ伝統工芸の世界に進んでみたいと思うようになったのだそう。
そして伝統工芸の世界で生きていくことを決意し、京都にある伝統工芸大学校に入学することを考えたそうです。
学校のオープンキャンパスで、出会ったのが、漆でした。
当時は、まったく漆のことを知らなかった田中さんですが、オープンキャンパスで蒔絵を体験したときに、漆の奥行きのある深みに魅せられたのだそうです。
その後、大学校で学んだのは、漆器でした。
卒業時、学校の先生の紹介で、仏具の世界で漆の仕事を始めました。
器と仏具では、「材料」「下地」「コツ」がまったく違ったそうです。

地元に戻り独立したい

独立して地元に戻りたいと思ったときに、田中さんを助けたのは、大学校時代と就職後に、まったく違う「漆」を取り扱った事でした。
「地元に帰ってから、漆器だけでなく、仏具も扱える事は、仏具の仕事も受けられるということです。それは、自分の強みになりました」。
ゆくゆくは、地元のだんじりの修理もしたいと語る田中さん。「漆」文化で、違う文化を支えていけるようになればと仰っていました。

「わしき」の作り方

「わしきは」、平面の和紙に切り込みを入れ、2枚の和紙を漆で張り合わせて作っています。
和紙の特性と漆の特性をうまく利用しているのが特徴です。

▲折り目を入れたいところに線を入れる
▲線に沿って折り目を入れる
▲漆を和紙に塗る
▲2枚の和紙を漆で繋ぐ
▲和紙のふちを折り目を活かして立ち上げる
▲貼り合わせた様子
▲和紙を何回か貼り合わせていく

最初作り始めた時は、型にはめて形を作っていたそうですが、現在ではこのようなやり方をしているとのこと。
今のやり方をし始めて和紙の柔らかな特性が活かされるようになりました。

漆は、生きているため、どんどん硬化していく。
また、普段から使った方が長持ちするので、長く大事に使えばそれだけ変化が楽しめる器なのだそうです。
さらに、「わしき」は、和紙の特性を活かすことで傷が目立ちにくい漆器にしあげているので、もっともっと気軽に使って変化を楽しんでほしいと仰っていました。
実際に作りたての器と何年か経過した器を触らせていただいたのですが、まったく硬さが違いました。

気軽に器と暮らしていける「わしき」ぜひ手に取って見ていただけたらと思いました。

(取材:富永 写真/田中漆工房・富永雅美)

【田中漆工房】
愛媛県西条市国安46
連絡先 TEL:090-3820-9067
    メール:urushikobo.tanaka.30@gmail.com
Facebook:田中漆工房
Instagram:Tomoyuki Tanaka (@tomoyukitnk)