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古民家で養蜂!?古民家養蜂園fumiのニホンミツバチを見学してきた

2023.03.29

「西条市にある築150年の古民家で養蜂をしている人がいるらしい……。」
「東京からUターンされた方がされていて、業界では珍しい日本ミツバチを飼育しているらしい」

そんな噂を聞きつけ、たどり着いたのは大町の住宅地の中にある広大なお庭付きの古民家。
大都会・東京から地元の愛媛に戻り、養蜂を始めて5年目になる有吉史雄さんにお話を伺う機会をいただきました。

半世紀ぶりに帰った故郷で養蜂という新しいチャレンジ

西条市で育った有吉さんは54年あまりを東京で過ごした後、西条市へ帰郷しました。
高校を出て以来となる地元へ久しぶりに帰ってきたときの心境をお伺いすると、まさに浦島太郎状態。
幸いにも高校時代のご友人から声がかかり、西条の現状を伺ったうえで、自分の知見を活かして西条で何ができるか考えていたそうです。

東京の銀座にあるビルの屋上で養蜂をしていることを知っていたこと、そして子どもの時から変わらない西条の自然の良さを伝えることは?と考えたのち、ご自宅の庭で養蜂を始めました。

一般的に養蜂をする際は採蜜量の多さや飼育の難易度から西洋ミツバチが使われるのですが、有吉さんの養蜂は日本ミツバチを選んでいます。

日本ミツバチは西洋ミツバチと比べて体が小さく、温暖化の影響から個体数が減り続けています。
西洋ミツバチより採蜜量も少ないものの、日本に昔からいる種であること、また、養蜂園が川に近いところに立地していることもあり西条の自然との共生を考え飼育チャレンジを決めました。
幸い今のところ順調に巣が成長し、年間で30リットルほどの蜂蜜が採れ、ネットショップで全国の方から購入されています。

300坪の敷地、60種類以上の植物たち

有吉さんのご自宅は住宅地の中にあります。といっても敷地が300坪を超えるほど広く、周囲は田畑が広がっているため近隣の方のお家へ蜂が飛び交うことはないようにされています。
また、日本ミツバチは性格がおとなしく、人間がよっぽどの攻撃をしない限り自ら襲ってくることは少ないそうです。

お庭での取材中、私の周囲にもミツバチが飛び交っていましたが刺されることも怖い思いをすることもなく、せっせと巣箱を出たり入ったりして働いていました。

巣箱の周囲には60種類以上の木や草花が植えられ、ここで採れるのは百花蜜といわれます。
西条の自然がギュっと詰まった蜂蜜はおいしそうです。
昨シーズンに採れたハチミツは全て売れてしまったそうなので、食べることがかなわず、次のシーズンでは是非味わってみたいと思います。

四季を感じ、ハチと暮らす。

ミツバチのひとつの群れを1群と数えます。
有吉さんの養蜂園では現在3群の巣箱があり、分蜂する春のシーズン前には新しい空っぽの巣箱を用意して群を増やしていきます。
(注釈:分蜂とはグループ内の蜂が一定数増えると、新しい女王バチとともに二つのグループに分かれ、片方が巣立っていくこと。)

巣箱は複数の段を重ねてできています。
ハチミツを巣の上部に貯めるハチの性質を活かして毎年1~2回、巣箱の最上段を切り離して採蜜します。

「食用農作物の受粉にミツバチは欠かせない。日本ミツバチを介して地球を考える、小さなSDGsに挑戦したい。西条の自然に日本ミツバチが飛び交うことで自然との共生を感じるまちにしたい」と語る有吉さん。

取材中、有吉さんの世界を見渡す視野の広さやエネルギッシュな行動力にとても驚きました。
なにかを始めるときに年齢は関係ない、ということを身をもって教えていただいた気がします。

取材:西条市大町
取材・文・写真:柳川あこ