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「もっと音楽を好きになってもらいたい」。
音楽で地域を活性化する、ミュージシャンの挑戦

2021.08.08

来る9月5日(日)、新居浜市旧別子山村で、「ゆらぎの森のコンサート」という音楽イベントが行われます(Youtubeにてライブ配信)。

コロナ禍の昨年スタートを切ったこのイベント。厳しい状況の中、それでも何かできることを、と立ち上げを主導したのは、ライブハウス「新居浜ジャンドール」の濵田竜輝(はまだ・りゅうき)さん。

イベント継続開催の背景には、「音楽を地域の文化として根付かせたい」という揺るぎない想いがありました。

新居浜の癒やしスポット「ゆらぎの森」

新居浜市から車で約1時間。標高700~900メートルのところにある旧別子山村に、森林公園ゆらぎの森はあります。

環境学習施設としての機能に加え、キャンプ場や宿泊施設も併設。雄大な自然の中でちょっとした余暇を過ごすのにぴったりの、新居浜の穴場的癒やしスポットです。

目玉はなんといっても、直径45メートルのドーム型のパーゴラ。藤の枝がつたう広大で幻想的な空間には、見上げるたび息をのみます。

▲日本最大級ともいわれるパーゴラ。藤の花が満開を迎える5月には、まるで異世界に迷い込んだかのような雰囲気に包まれます

昨年の秋、このパーゴラを舞台に行われたのが「ゆらぎの森のコンサート」。

実は、昨年私もこのコンサートに参加したのですが、山道を進む道中からもう小旅行気分。秋空の下、森の中でゆったりと耳を傾ける音楽には格別なものがありました。

▲昨年の来場者数は約150名。ミニコンサートスタイルがゆらぎの森という場所にもぴったりでした
▲地域の飲食店さんも出店。おいしいものと音楽と森、という最高にぜいたくな組み合わせでゆったり(写真はともに昨年の様子)

コロナで仕事がほぼゼロに! 今だからできること

コロナによってあらゆるイベントが中止や延期を迫られる中、濵田さんが、なぜこのコンサートを立ち上げることになったのか。

その背景には、「コロナによって仕事が実質ゼロになった」という厳しい現実がありました。

「もともとジャンドールは、イベントの音響や照明などの受注仕事がほとんどだったんです。それがコロナで仕事がなくなり、仕事を通じて音楽に触れていた生活が一変しました」

ライブハウスのみならず、コロナによって全面停止に追いやられた劇場やイベント関係者は少なくないでしょう。でも、イベントの立ち上げはそれだけが理由ではない、と濵田さんは話します。

「新居浜には、野外フェスのような、音楽を主体とするイベントがないんですよね。地域に音楽があまり根付いていないというか。だから、ジャンドールとしても、いつか自分たち主導の音楽イベントをやりたいというのは、コロナが広がるずっと前から話していて」

イベントがなくなったことで、しずまりかえっていく地域。濵田さんは、新居浜がますます音楽という文化から遠ざかっていくことに、危機感を覚えたといいます。
「だったら、今やろうと。こういうときこそ、ジャンドールが先頭を切ってやるべきだと思いました。自分たちの仕事を作るという意味でも。オーナーの伊藤さんに相談したら、“面白そうだね、やってみよう”とすぐに話に乗ってくれました」

▲「新居浜ジャンドール」オーナーの伊藤俊一さん(右)と濵田さん(左)。伊藤さんは、地域で音楽活動をするなら知らない人はいない、というほどミュージシャンらから慕われる存在

誰にでも楽しめる音楽イベントを目指して

2回目となる今年は、新居浜商工会議所青年部(YEG)との協働が実現。予算の不足分をクラウドファンディングで調達するなど、新しい試みにも挑戦しています。

準備を進める中、濵田さんがこだわっていること。それは、誰にでも気軽に楽しめる音楽イベントにすることです。

アーティストたちの出演料を無料にしたのも、その一つ。(音楽イベントでは、出演料をアーティスト側に支払ってもらうのが慣例)

「少しでも参加のハードルを下げ、どんな人でも参加しやすい場づくりをしたい。クオリティを保ちながら、誰にとってもなじみやすい音楽を提供したいと思っています。それに、ゆらぎの森自体、市民の皆さんでも行ったことがないという人が結構多いんですよね。イベントを通じて、この場所を知ってもらう機会になったら嬉しいですね」

▲秋になると紅葉に染まる森(昨年)。濵田さんは、イベントをきっかけに、その認知度アップにも貢献したいと話します

音楽を、もっと地域の文化に

実は、濵田さん自身、結成4年目のロックバンド「the goodbye youth」でボーカルを担当するミュージシャン。バンド活動のほか、楽曲の制作・提供も行う音楽家でもあります。

▲the goodbye youthは昨年のコンサートにも出演。新居浜を拠点にゆるやかに活動中。(※写真はシンガー琴子さんとのコラボ出演)

のびやかな歌声と口ずさみたくなる曲調で、the goodbye youthは私も大好きなバンドなのですが、活動がマイペースすぎるゆえ”脱力系”バンドとしても有名(笑)。音楽活動との両立については、次のように話します。
「バンドはもちろん好きで続けていきたいんですけど、仕事もすごく好きなので、僕はどっちかがなくなるとしんどくなるんです。よく”やる気がないっ”て言われますけど(笑)、細く長く続けていくスタイルでやっていきたいですね」

●星音チャンネル

▲Hello!NEW新居浜駅周辺アートプロジェクト「星と音楽のガーデンパーティ」(2020年開催の新居浜市との協働オンラインイベント)では、濵田さんがテーマソング「星降る夜に」を制作した

最近では、イベント音響はもちろん劇団での照明プロデュースも手がけ、裏方にとどまらない活躍を見せる濵田さん。

技術者としても、表現者としても、その行動のベースには、「地域にもっと音楽の文化が広がってほしい」という想いがあります。

「みんなに音楽をもっと好きになってほしいし、音楽を通じて地域が盛り上がってほしい。音響の若い世代の担い手も育てたいですしね。ゆらぎの森コンサートは、“音楽に対する広告”だと思っているんです」

地域に、音楽文化が根付きつつある——、濵田さんのお話を聞きながら、一番強く感じたのは、そんなこと。

「ゆらぎの森のコンサート」はきっと、地域の音楽文化を牽引するイベントに育っていくでしょう。そして、それを見届けたい。

9月5日はぜひ、ライブ配信で集いましょう。

濵田さん、ありがとうございました!

(取材・文:高田ともみ、 写真提供:新居浜ジャンドール 、高田ともみ)

【今回の取材先】
「ゆらぎの森コンサート」
日程:2021年9月5日(日)
時間:10:00~17:00(予定)
場所:森林公園ゆらぎの森からのYoutubeライブ配信(視聴無料)
URL:https://m.youtube.com/watch?v=BXcF1TkwaqE&feature=youtu.be
MC:Non Nom. (ノンノム)
主催:新居浜商工会議所青年部

※最新情報は、SNS等にて発信。コロナの状況によって内容は変更になることがあります。
万全の感染対策を行いながら実施します。

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森林公園ゆらぎの森
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新居浜商工会議所青年部
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